有馬大道出店公園計画 その後・・・・

 それは、梅雨入りを目前に控えたかと思うほど雨の降り続いた明くる日のこ とだった。
 私を恐喝して自分の店の宣伝をするよう迫ってきたD氏と、バイトの日が再び かち合ってしまった。しかも、今度は臨時ではない。これから毎週こうである。 さあ大変だ。公園〔後援〕計画を中途半端に仮公開のままにしておくつもりだっ た私は、はっきり言って焦った。もはや適当ないいわけは通用しない。さあ、ど う迎撃作戦を練るか・・・などと考える余裕もなく、彼はやってきてしまった。
 私は、努めてこの話題を口に出さぬようにしていた。時は平和裏に通り過ぎて ゆくかに思えた。だが、彼の口からこの言葉が漏れたとき、事は始まったのだ。
「つかれた・・・」
疲れた?そのような言葉は、日夜世界平和のために戦っているこの私のような ものが・・・・いや、やめておこう。つまらないことで争いを起こすのは得策で はない。ここは一つ、無難な言葉で片づけておこう。
「・・・・人生に?」
彼は、何故か憤りを感じたようであった。どうやら本当に疲れているらしい。
「人生にって、僕はこれでも結構充実してる人生送ってるつもりだよ。(中略 )大体あなたは・・・」
あなたは何だというのだ。
「結局僕の店に来てくれなかったじゃない」
・・・・いや、だから、ここ3ヶ月以内に行くと言ってあるではないか。
「ずっと待ってたのに」
男に言われてもうれしくない。
「いや、ですから、暇があればいずれ・・・まあ、近いうちに・・・・」
「近いうちにって、もうお店畳んじゃったんだよ」
・・・・え?
「・・・いつ?」
「今日」
「聞いてないよお!」

これは本当であった。私はてっきり、彼は定年後までその店を続けるつもりだ と思っていたのに
「知らなかったの?」
「知りませんよ。初耳ですよ。何ですか、ひどいじゃないですか。私に一言の 相談もなく、店を閉めるなんて」
「いや、それは・・・・」
勝った。私はついに、D氏に勝ったのだ。
「いや、だから、ほら、もう閉めるからってあそこのポスターだってはがして あるでしょ」
それは私がはがしたものだ。
「ひどい人だ。だ(自粛)さんが、こんなひどい人だったなんて・・・」
「そうだよねえ。ひどいよねえ・・・・。そうだ、おわびに今夜の夕食は僕が 作ってあげよう。」
何?何か話が変な方向になってきたぞ
「そういえば、この間はとてもすばらしいものをごちそうになったし、そのお 礼もしなきゃねえ」
やばい・・・・。彼は、この間のこと( 今夜の夕食 の4月26日の項参照)を逆恨みしているらしい・・・。
あれは僕が悪いんじゃないのに・・・・

「僕は、白身魚結構好きなんだよねえ」D氏はとてもうれしそうだ

・・・・・・・
出てきたのは、なんと言うことはない、ただの「チリ白身魚丼」であった。



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