昨年に続いて、今年も荒野草途伸の年末を追ってみよう。何、大した意味は無い。ただ、本人の主張によればいずれ世界平和の象徴となるであろう偉大なるバギ星人荒野草途伸、その足取りを記録しておくことはキリストの足取りを克明に記録した医者ルカの業績にも匹敵するであろうと、それだけのことだ。
まず、日取りを追って彼の行動を記録する前に、彼の活動源泉となるべきもの、つまりはオカネのことについて記しておこうか。12月23日発行の今夜の夕食MMによると、こんな事が書かれている。
さて。それでは、自称天下無敵のバギ星人荒野草途伸の行動について、12月27日あたりから順に追っていこうか。
12月27日、この日は、荒野草途伸の雇用元である某O社の忘年会であった。この会社は、忘年会があるからというただそれだけの理由の為に、福岡や鹿児島に派遣している社員を費用会社持ちで呼び戻してくれる。なかなか良い会社に見えるだろう。が、ボーナスが0.6ヶ月分しかないのだからそれで見事に相殺されてしまっているというか派遣組でなかったら無茶苦茶な低待遇である。
ちなみに、この日の九州派遣組の参加者は5人。うち、福岡組は、荒野草途伸を含めて3人の予定であった。
本来ならもう一人、彼と同じ琉大物理出身(学科改組の為、学科名は違うが)のMM氏(28歳男性、「花とゆめ」愛読者)が来るべきであったのだが、常駐先の忘年会と日程が重なってしまった為、泣く泣く断念したらしい。
この他の福岡組についても、少し語っておこうか。KF氏(28歳)、そしてST氏(23歳)の二名である。ちなみに、二人とも子持ちである。けしからんことである。我らが偉大なる荒野草途伸など、子づくりどころか女性とまともに会話してもらったことすらないのだから。まあしかし、オタクだから仕方ない。
それはいいとして。福岡出発の当日、KF氏は見事に遅刻した。9:00福岡発の飛行機に乗らなければならないのに、目覚めたのは8:55。理由はちゃんとあるのだ。その前日、彼らが実際に勤務する会社の、課の忘年会があったのだ。我らが賢明なる荒野草途伸は翌日沖縄に行くからという表向きの理由(実際には単に飲み会が嫌い)から出席しなかったのだが、KF氏はこの手の集まりが大好きな為喜び勇んで参加し、おそらくは4次会まで行ったのである。
さて、朝の便を乗り逃がしたKF氏。この日、これ以降の便は夜までずっと満席。結局、面談(会社が旅費を出す以上建前だけでも仕事で来ているという扱いにする為、社長や常務との面談がセッティングされていたのだ)に間に合わないどころか忘年会にも遅刻するという結果になってしまった。面談はともかく忘年会大好きな彼にとって、こんな不幸はなかったであろう。
一応フォローしておくと、KF氏は普段はとても優秀なSEである。仕事上でこんな失態をしでかすことは、まず無い(たぶん)。
何はともあれ、ST氏と二名で沖縄入りした荒野草途伸。鹿児島出向組の二名、ST氏(25歳)とK氏(名前とか年齢知らない)もやってくる。
計4人で面談をすませた後、沖縄出身のST氏(23歳)とK氏は一端自宅に戻る。県外出身の荒野草途伸とST氏(25歳)は、することがない。旅費精算やらぼーと待つやらでひたすら時間をつぶす。この間、他の社員は、大掃除で忙しく走り回っている。けしからん存在であることこの上ない。
そんな彼らに、沖縄勤務組のUE氏(推定年齢26歳)が語りかけてくる。
「二人とも、いつ帰るんですか?」
「自分は30日に。」とは、ST氏(25歳)の答え。
「僕は、ちょっと東京に行く用事があるので、明日の朝に・・・31日ぐらいに愛知に戻るけど」
この荒野草途伸の回答に、何かが閃いたような態度を見せるUE氏。
「30日で、東京で、Iさん・・・」
ちなみにIというのは、荒野草途伸の戸籍上の姓である。とにかく、どういう論理展開だかよくわからないが、彼は荒野草途伸の東京での目的を知ってしまったようである。
「たぶん、あなたの想像で間違いないかと。」
「合ってますか。」
「ええ、たぶん。」
具体的な行事名を明言しないあたりが、一抹の良心である。何しろ、建前とは言えまだ勤務中だから。
「着メロが『鳥の歌』って段階で、アレですからねー」
ちなみに、説明するまでもないと思うが、「鳥の歌」というのは20世紀最後にKeyが放った不朽の名作「AIR」のオープニングテーマである。
「まあ、わかる自分もアレなんですけど。」
「アレですよねー」
この間、ST氏(25歳)は、話について行けず一言も発せず。こういう、他人がついていけない話を平気でするあたりが、オタクの悪い癖である。性質の悪いのになると、話について行けるように余計な知識を吹き込み出したりもする。そこまでの行為に及ばなかったあたり、この二人はまだ救いようがあると言えるだろう。
この後、することもない二人(荒野草途伸&ST氏25歳)は、とりあえず宿泊場所のカプセルホテルにチェックイン。この移動中のタクシーで、ST氏(25歳)が訊いてくる。
「明日、何があるんですか?」
オタクにとってここは、一種の正念場である。何故なら、このときの自分の回答如何によっては、相手の人生を大きく狂わせてしまう結果にもなりかねない。また逆に、自分達への偏見を自ら煽ってしまう可能性だってある。事実は正確に、しかし相手の人生に配慮した物言いを心がけなければならない。
「んっと、コミックマーケットって言うんだけどね・・・そう、同人誌・・いや、同人誌ってのは、なんだ、自費出版の小規模なものみたいな奴だ、そういうのの、即売会だよ。」
「はあ、自費出版ですか。すごいですね。」
彼はなぜだか感嘆した。荒野草途伸の説明が良くなかったのであろうか。
「で、結局、何が集まるんですか?」
「オタクが集まる。」
これ以上正確で的を射た説明はないだろう。そしてST氏(25歳)は、それ以上何も訊いてこなくなった。大成功である。これで彼は、今後おかしな道に惑うこともなく、優秀で人畜無害なSEとして一生を送ることになるであろう。
「今夜の夕食MM」によると、この後荒野草途伸は、こういう事があったらしい。
この日彼は、10:35発羽田行きの飛行機に乗る。はずが、何故か10時と勘違いしていて、えらく早めに宿を出てしまう。まあ30分ばかし残っていたところで、特に良いこともなかったとも言えるが。AIRH”の繋がりが悪かったようであるし。
那覇空港で1時間半程時間をつぶす間、iAcnとメールで午後以降の打ち合わせをしている。少し追いかけてみよう。
これはあまり打ち合わせとは関係ない。
んー・・・・
青物横丁で荷物コインロッカーに入れて、歩いて
品川シーサイドまで行ってりんかい線、という風に
考えていたのだが。
必要かな?
実際のところ、東京の気温は昼にはそんなに寒くなくなっており、手袋は必要なかった。そして荒野草途伸は、上記メールの通りのルートを採らない。相変わらずの行き当たりばったり否臨機応変ぶりを発揮し、羽田空港で京急線に乗る段階で、品川でコインロッカーに荷物を預けたあと大井町に行きりんかい線に乗る、という風にルート変更してしまう。理由は、乗り換えの京急蒲田で先に来るのが快速特急(青物横丁に停車しない)だった為。詰められる時間は詰めてしまおうというこの性格は、一体どこから来たものであろうか。
そして彼は、この計画変更のしっぺ返しを食うことになる。品川駅みたいな大きな駅なら、コインロッカーなど山程あるだろうと高をくくっていたのだ。実際のところ、発見されたコインロッカーは、中央口の一個だけ。そして全てふさがっている。慌てた彼は、品川駅構内を右往左往したあげく品川在住の友人に携帯メールを打つも、返答無し。こういうときには、彼の臨機応変ぶりは発揮されない。
結局、一か八かの賭に出て大井町まで移動する。幸い大井町のコインロッカーは塞がってはいなかった。だがもし、ここのコインロッカーまで塞がっていたら、彼は推定総重量15Kgの荷物を持ちながら、人混みごった返す混み家会場に乗り込んでいくつもりだったのだろうか。
全く以て無謀な話である。どうせなら、逆方向に乗って宿泊場所の上大岡(父宅)まで行って、一度荷物を置いてくるべきだったのだ。そもそも羽田空港で乗ったのは三崎口行き(上大岡方面)の快速特急だったのだから。
何はともあれ有明に到着した荒野草途伸。このとき時刻は14:30頃。完売したわけでもないのに既に撤収を始めているサークルがいる。けしからんと感じた我らが荒野草途伸、箱詰めしようとしている本を無理矢理もぎ取って、「これください」。否、正確にはそこまでの行為は働いていないが。しかし、まだ箱詰めされていない本を読みふけって片づけの邪魔をしていたのは事実である。これでは、どちらがけしからんのか判ったものではない。
結局この日、彼は「あずまんが」系を中心に14冊程入手している。その詳細な内容は、荒野草途伸に報告する気力があったらリストアップされるであろう。
今夜の夕食によると、この日彼は、iAcnにステーキをたかっているらしい。彼のボーナスが二桁以上あることを妬んでのものだろう。全く以て卑しい男である。しかもその上、「ほんとは渋谷で寿司だったのになー」とまで発言している。どこまでも腐りきった根性、本当にこの様な男に、これからの地球の平和を委ねて良いものだろうか。
ちなみに荒野草途伸、この席で初めて、東京ミレナリオがなんなのかを知る。
「東京駅の近くで、何かイルミネーションとかやってるらしいよ。」
「ああ、そうなんだ。成る程ね」(本当はあまり理解していない)
「・・あ。念のために確認するが、今君が訊いたのは、『東京ミュウミュウ』の事じゃないよな・・・?」
「え・・? いや、違う。たぶん違う。て言うか明らかに違う」(不必要に動揺)
「ふーん・・・。」
「いや、マジで違うって。東京ミュウミュウは知ってるって! 見たこと無いけど!!」(大声)
ちなみに、この会話をしている飲食場所、秋葉原。辛うじて会話の内容が許される場所である。これが渋谷の寿司屋だったら、間違いなくつまみ出されていたであろう。
「そんな事じゃダメだ! 渋谷でも、こういう健全な会話が出来るようにならなければ!! 渋谷に正しい文化を広めるんだ!!!」
こんな発言までしていたようである。いくら疲れていたとは言え、ちょっと電波放出しすぎである。
この日は混み家二日目。だが、荒野草途伸にとって興味を引く内容が殆ど無かったので、1時間程で引き上げ。東京駅の大丸にある天ぷらやで、早めの夕食をすませ(これもiAcnにたかったらしい)、そのまま立川のiAcn宅へ。途中、翌日以降着るものがないからということで、東京駅と立川駅のユニクロを物色。重い荷物を抱え込んでしまった為、翌朝立川から有明への直行は出来なくなる。結局、翌朝早めに出て一端上大岡に戻って荷物を置いた後、有明に行くことに。何をやってるんだか。
立川iAcn宅到着後、彼は地獄を見せられることになる。それはまさに、二日連続でメシをたかられたiAcnの逆襲と言うに相応しい内容であった。彼、iAcnは、所有のHDレコーダーに毎週「シスタープリンセス・リピュア」を録画していたのだが、それを見るよう、荒野草途伸に強要してきたのである。しかも、史上二番目に痛いと言われる咲夜の回を、である。ちなみに史上最悪が可憐であることは言うまでもない。尚、この咲夜の回の内容については、大吉マスター21氏のページにて極めて正確なレビューが行われているので、そちらを参照していただきたい。
尚、この日彼が見せられたのは咲夜、衛、鈴凛の3人分だけであった。というかそれで勘弁してもらったのである。荒野草途伸曰く、「鈴凛だけはまともだった」そうであるが、しかし、それだけで彼がシスプリ好きに転向するはずもなく、むしろシスプリ嫌いはいっそう加速したものと思われる。
尚、iAcnの名誉の為、彼の主張だけは今ここで紹介しておこう。「俺も、可憐は嫌いだよ」フォロー終わり。
この後、小腹が好いたからと二人で外に出たところ、荒野草途伸のPHSにメールが入る。前日、品川駅でコインロッカーを探しながら迷走しているときに送ったものへの返信であった。
この日の朝の荒野草途伸の記憶は、殆ど無い。否、この日に限らず、彼にとって朝の記憶というのは、初めから存在していないに等しい。この様な状態の彼に、電話をかけたりしたらどうなるか。かつて、彼が大学生であった頃、卒業研究の指導教官がこれをやってしまったことがある。以降その教官は、二度と彼に電話がかけられなくなった。
であるからして。彼がiAcn宅を出るとき、ユニクロの袋を忘れてしまったのは仕方のないことなのである。言わば、必然である。SUICA(JR東日本のICプリペイドカード)の残高が足りないのに、入金し忘れて改札を強行突破しようとしても、それは仕方のないことなのである。
ユニクロの袋を下げて上大岡に戻ってきたとき、彼は、上大岡にもユニクロがあることを知る。しかも、立川や東京駅のユニクロよりも大きそうだ。
人生こんなものである、とまあ、この程度だから言えるのであろう。
この後彼は、再び昏倒しそうになるのを我慢して、12:30頃に出発した。直後、iAcnからのメールが入る。
この日彼は、前述のように17:30頃に帰った後、すぐに寝てしまう。
日付変わって午前0:30頃、荒野草途伸は起き出してくる。そして、iAcnに一本のメールを打つ。
疲れてばたんきゅーしてたくせに、何を言い出すかなこの人は。
何であるにせよ、彼は出発時間ぎりぎりの午後14時頃まで寝ていたのだから、東京ミレナリオも東京ミュウミュウも見れなかったわけだ。
カラオケで彼らが何を歌ったかは、敢えて触れないでおこう。世の中には知らない方が良いこともあるのだ。最も、殆どの人にはその内容にほぼ察しがついているとは思うのだが。ちなみに、荒野草途伸曰く
「満足に歌えたのは、ジェットマンだけだった。」
それが満足に歌える段階で、問題です。
ともあれ、こうして荒野草途伸の2002年最後の日は終わったのだった。
二人がカラオケ店を出たとき、外はもう暗くなっていた。彼らは閉店間際の、今年最後の秋葉原界隈をうろついた後、それぞれの家路についた。二人とも、何故だか疲れ切っていた。乗り込んだ京浜東北線の電車が東京駅に到着したとき、荒野草途伸の脳裏に、一つの単語がよみがえった。
「東京ミュウミュウ・・・・」
だが、彼にそれを見に行く気力は、もはや無かった。否、たとえあったとしても、それを見ることは出来ない、東京駅前で開催されているのは、そんな訳のわからんイベントではないからだ。
そして宿にたどり着いたとき、彼は、来年の抱負を一つ思いついた。
「来年からは、東京ミュウミュウをちゃんと見よう。」
荒野草途伸27歳。正月を迎える毎に、彼の人生は退行していくようである。