年末報告記2002


 昨年に続いて、今年も荒野草途伸の年末を追ってみよう。何、大した意味は無い。ただ、本人の主張によればいずれ世界平和の象徴となるであろう偉大なるバギ星人荒野草途伸、その足取りを記録しておくことはキリストの足取りを克明に記録した医者ルカの業績にも匹敵するであろうと、それだけのことだ。

 まず、日取りを追って彼の行動を記録する前に、彼の活動源泉となるべきもの、つまりはオカネのことについて記しておこうか。12月23日発行の今夜の夕食MMによると、こんな事が書かれている。

 


そう言えば、ボーナスが出たんですよ。
 正確には、出ていた。18日に。いえ、知らなかったんですよ。ボーナス出てたなんて。20日になってから、同じ出向組の同僚から「ボーナス出てるらしいですよ」と聞かされて、初めて知りました。
 なんでも、他のもう一人の同僚のほうに、次長から電話で出たことが知らされたらしく、彼はその人から伝え聞いたのだとか。
 何でその人にだけ知らせて、自分らには知らせないのか。曰く、
「あまりにあんまりな額なので知らせるに忍びなかった」。
 なんじゃそりゃ。
 そりゃまあ、確かに少ないですけどね。0.6ヶ月分だし。額にして一桁だし。「出ないよりマシかあ、不景気だし」としか言いようのない額です。
 ちなみに、私の友人(会社違う)は、正確な額は知りませんが月給の「***%」だったそうです。
 %とかあるから、同じ境遇なんだと思い、「ああ君んとこも、月給より少なかったんだね」と彼に言ったところ、
「桁数見ろ、アホか、月給より少ないわけ無いだろ」
と言われてしまいました。
 ちょっと惨めな気分です。
(一部修正)


というようなことが書いてある。
 ちなみに、この友人というのは、荒野草途伸がiAcnと呼んでいる、東京都立川市在住の男のことである。このiAcnの存在については、この後荒野草途伸の年末の行動にそれなりに関わってくることになるので、覚えておくと良いだろう。
 

 さて。それでは、自称天下無敵のバギ星人荒野草途伸の行動について、12月27日あたりから順に追っていこうか。
 12月27日、この日は、荒野草途伸の雇用元である某O社の忘年会であった。この会社は、忘年会があるからというただそれだけの理由の為に、福岡や鹿児島に派遣している社員を費用会社持ちで呼び戻してくれる。なかなか良い会社に見えるだろう。が、ボーナスが0.6ヶ月分しかないのだからそれで見事に相殺されてしまっているというか派遣組でなかったら無茶苦茶な低待遇である。
 ちなみに、この日の九州派遣組の参加者は5人。うち、福岡組は、荒野草途伸を含めて3人の予定であった。
 本来ならもう一人、彼と同じ琉大物理出身(学科改組の為、学科名は違うが)のMM氏(28歳男性、「花とゆめ」愛読者)が来るべきであったのだが、常駐先の忘年会と日程が重なってしまった為、泣く泣く断念したらしい。
 この他の福岡組についても、少し語っておこうか。KF氏(28歳)、そしてST氏(23歳)の二名である。ちなみに、二人とも子持ちである。けしからんことである。我らが偉大なる荒野草途伸など、子づくりどころか女性とまともに会話してもらったことすらないのだから。まあしかし、オタクだから仕方ない。
 それはいいとして。福岡出発の当日、KF氏は見事に遅刻した。9:00福岡発の飛行機に乗らなければならないのに、目覚めたのは8:55。理由はちゃんとあるのだ。その前日、彼らが実際に勤務する会社の、課の忘年会があったのだ。我らが賢明なる荒野草途伸は翌日沖縄に行くからという表向きの理由(実際には単に飲み会が嫌い)から出席しなかったのだが、KF氏はこの手の集まりが大好きな為喜び勇んで参加し、おそらくは4次会まで行ったのである。
 さて、朝の便を乗り逃がしたKF氏。この日、これ以降の便は夜までずっと満席。結局、面談(会社が旅費を出す以上建前だけでも仕事で来ているという扱いにする為、社長や常務との面談がセッティングされていたのだ)に間に合わないどころか忘年会にも遅刻するという結果になってしまった。面談はともかく忘年会大好きな彼にとって、こんな不幸はなかったであろう。
 一応フォローしておくと、KF氏は普段はとても優秀なSEである。仕事上でこんな失態をしでかすことは、まず無い(たぶん)。

 何はともあれ、ST氏と二名で沖縄入りした荒野草途伸。鹿児島出向組の二名、ST氏(25歳)とK氏(名前とか年齢知らない)もやってくる。
 計4人で面談をすませた後、沖縄出身のST氏(23歳)とK氏は一端自宅に戻る。県外出身の荒野草途伸とST氏(25歳)は、することがない。旅費精算やらぼーと待つやらでひたすら時間をつぶす。この間、他の社員は、大掃除で忙しく走り回っている。けしからん存在であることこの上ない。
 そんな彼らに、沖縄勤務組のUE氏(推定年齢26歳)が語りかけてくる。
「二人とも、いつ帰るんですか?」
「自分は30日に。」とは、ST氏(25歳)の答え。
「僕は、ちょっと東京に行く用事があるので、明日の朝に・・・31日ぐらいに愛知に戻るけど」
 この荒野草途伸の回答に、何かが閃いたような態度を見せるUE氏。
「30日で、東京で、Iさん・・・」
 ちなみにIというのは、荒野草途伸の戸籍上の姓である。とにかく、どういう論理展開だかよくわからないが、彼は荒野草途伸の東京での目的を知ってしまったようである。
「たぶん、あなたの想像で間違いないかと。」
「合ってますか。」
「ええ、たぶん。」
 具体的な行事名を明言しないあたりが、一抹の良心である。何しろ、建前とは言えまだ勤務中だから。
「着メロが『鳥の歌』って段階で、アレですからねー」
 ちなみに、説明するまでもないと思うが、「鳥の歌」というのは20世紀最後にKeyが放った不朽の名作「AIR」のオープニングテーマである。
「まあ、わかる自分もアレなんですけど。」
「アレですよねー」
 この間、ST氏(25歳)は、話について行けず一言も発せず。こういう、他人がついていけない話を平気でするあたりが、オタクの悪い癖である。性質の悪いのになると、話について行けるように余計な知識を吹き込み出したりもする。そこまでの行為に及ばなかったあたり、この二人はまだ救いようがあると言えるだろう。

 この後、することもない二人(荒野草途伸&ST氏25歳)は、とりあえず宿泊場所のカプセルホテルにチェックイン。この移動中のタクシーで、ST氏(25歳)が訊いてくる。
「明日、何があるんですか?」
 オタクにとってここは、一種の正念場である。何故なら、このときの自分の回答如何によっては、相手の人生を大きく狂わせてしまう結果にもなりかねない。また逆に、自分達への偏見を自ら煽ってしまう可能性だってある。事実は正確に、しかし相手の人生に配慮した物言いを心がけなければならない。
「んっと、コミックマーケットって言うんだけどね・・・そう、同人誌・・いや、同人誌ってのは、なんだ、自費出版の小規模なものみたいな奴だ、そういうのの、即売会だよ。」
「はあ、自費出版ですか。すごいですね。」
 彼はなぜだか感嘆した。荒野草途伸の説明が良くなかったのであろうか。
「で、結局、何が集まるんですか?」
「オタクが集まる。」
 これ以上正確で的を射た説明はないだろう。そしてST氏(25歳)は、それ以上何も訊いてこなくなった。大成功である。これで彼は、今後おかしな道に惑うこともなく、優秀で人畜無害なSEとして一生を送ることになるであろう。

 「今夜の夕食MM」によると、この後荒野草途伸は、こういう事があったらしい。


 上述のように、今日は会社の忘年会でした。
 私の所属する会社は、本社が沖縄にある為、現在所在地沖縄です。沖縄地方は雨。
 で、その忘年会ですが、ビンゴゲームでカラープリンタがあたりました。去年当たったのがクリアフォルダだったので、今年もどうせそんなもんだろうと思っていたので、結構うれしいです。
 とはいえ、何しろプリンタですからでかいですし、しかも私明日から東京経由で愛知に行くという予定だったのでこれどうしようか宅配便で送ろうか送料もったいないなあ、とか考えていました。
ところ、後輩が席までやってきて、
「そのプリンタ売ってくれません?」
 結局6千円で売りました。持ち帰る手間が省けたことを考えれば、納得です。
 今年は結構いろいろあったけど、結構良いこともあったなと思える一日でした。


 この後輩というのは、ST氏(23歳)のことである。荒野草途伸がクジ引いて当選して席にプリンタ持ち帰ったら即交渉にやってきたくらいだから、相当欲しかったのであろう。
 ちなみに、前述のKF氏(28歳)は、常務が当てたチーズフォンデュセットを頂いた。これで家族サービスしなさいということだろう。何しろ、前夜のことで彼の細君は相当お怒りらしいから。チーズフォンデュぐらいで許してくれるのかどうか疑わしいが、まあ何もしないよりはましだろう。
 
 

12/28


 この日彼は、10:35発羽田行きの飛行機に乗る。はずが、何故か10時と勘違いしていて、えらく早めに宿を出てしまう。まあ30分ばかし残っていたところで、特に良いこともなかったとも言えるが。AIRH”の繋がりが悪かったようであるし。
 那覇空港で1時間半程時間をつぶす間、iAcnとメールで午後以降の打ち合わせをしている。少し追いかけてみよう。


> >忘年会でプリンタが当たった
> >でも、即後輩に6千円で売った
> >(送料負担せずにすむことを考えたら妥当)
> >
> 俺が欲しかった(TT)

 これはあまり打ち合わせとは関係ない。


> >> #東京寒いので 手袋必須かも。
> >> #コンビニとか売っているから 購入すると吉
> >
> >軍手ならあるのだが・・・
> >そんなに寒いのか?
> >
> 今日最高気温予想が9度。。。
> 去年より辛い。
> 室外にいる時間がちょっと長いと予想されたら
> 手袋必須かも。

んー・・・・
青物横丁で荷物コインロッカーに入れて、歩いて
品川シーサイドまで行ってりんかい線、という風に
考えていたのだが。
必要かな?



 東京は寒いので、手袋が必要、という話。に対して、荒野草途伸は有明まで行くルートの話をしている。少々的はずれな会話である。

 実際のところ、東京の気温は昼にはそんなに寒くなくなっており、手袋は必要なかった。そして荒野草途伸は、上記メールの通りのルートを採らない。相変わらずの行き当たりばったり否臨機応変ぶりを発揮し、羽田空港で京急線に乗る段階で、品川でコインロッカーに荷物を預けたあと大井町に行きりんかい線に乗る、という風にルート変更してしまう。理由は、乗り換えの京急蒲田で先に来るのが快速特急(青物横丁に停車しない)だった為。詰められる時間は詰めてしまおうというこの性格は、一体どこから来たものであろうか。
 そして彼は、この計画変更のしっぺ返しを食うことになる。品川駅みたいな大きな駅なら、コインロッカーなど山程あるだろうと高をくくっていたのだ。実際のところ、発見されたコインロッカーは、中央口の一個だけ。そして全てふさがっている。慌てた彼は、品川駅構内を右往左往したあげく品川在住の友人に携帯メールを打つも、返答無し。こういうときには、彼の臨機応変ぶりは発揮されない。
 結局、一か八かの賭に出て大井町まで移動する。幸い大井町のコインロッカーは塞がってはいなかった。だがもし、ここのコインロッカーまで塞がっていたら、彼は推定総重量15Kgの荷物を持ちながら、人混みごった返す混み家会場に乗り込んでいくつもりだったのだろうか。
 全く以て無謀な話である。どうせなら、逆方向に乗って宿泊場所の上大岡(父宅)まで行って、一度荷物を置いてくるべきだったのだ。そもそも羽田空港で乗ったのは三崎口行き(上大岡方面)の快速特急だったのだから。

 何はともあれ有明に到着した荒野草途伸。このとき時刻は14:30頃。完売したわけでもないのに既に撤収を始めているサークルがいる。けしからんと感じた我らが荒野草途伸、箱詰めしようとしている本を無理矢理もぎ取って、「これください」。否、正確にはそこまでの行為は働いていないが。しかし、まだ箱詰めされていない本を読みふけって片づけの邪魔をしていたのは事実である。これでは、どちらがけしからんのか判ったものではない。
 結局この日、彼は「あずまんが」系を中心に14冊程入手している。その詳細な内容は、荒野草途伸に報告する気力があったらリストアップされるであろう。

 今夜の夕食によると、この日彼は、iAcnにステーキをたかっているらしい。彼のボーナスが二桁以上あることを妬んでのものだろう。全く以て卑しい男である。しかもその上、「ほんとは渋谷で寿司だったのになー」とまで発言している。どこまでも腐りきった根性、本当にこの様な男に、これからの地球の平和を委ねて良いものだろうか。
 ちなみに荒野草途伸、この席で初めて、東京ミレナリオがなんなのかを知る。
「東京駅の近くで、何かイルミネーションとかやってるらしいよ。」
「ああ、そうなんだ。成る程ね」(本当はあまり理解していない)
「・・あ。念のために確認するが、今君が訊いたのは、『東京ミュウミュウ』の事じゃないよな・・・?」
「え・・? いや、違う。たぶん違う。て言うか明らかに違う」(不必要に動揺)
「ふーん・・・。」
「いや、マジで違うって。東京ミュウミュウは知ってるって! 見たこと無いけど!!」(大声)
 ちなみに、この会話をしている飲食場所、秋葉原。辛うじて会話の内容が許される場所である。これが渋谷の寿司屋だったら、間違いなくつまみ出されていたであろう。
「そんな事じゃダメだ! 渋谷でも、こういう健全な会話が出来るようにならなければ!! 渋谷に正しい文化を広めるんだ!!!」
 こんな発言までしていたようである。いくら疲れていたとは言え、ちょっと電波放出しすぎである。
 

12/29


 この日は混み家二日目。だが、荒野草途伸にとって興味を引く内容が殆ど無かったので、1時間程で引き上げ。東京駅の大丸にある天ぷらやで、早めの夕食をすませ(これもiAcnにたかったらしい)、そのまま立川のiAcn宅へ。途中、翌日以降着るものがないからということで、東京駅と立川駅のユニクロを物色。重い荷物を抱え込んでしまった為、翌朝立川から有明への直行は出来なくなる。結局、翌朝早めに出て一端上大岡に戻って荷物を置いた後、有明に行くことに。何をやってるんだか。
 立川iAcn宅到着後、彼は地獄を見せられることになる。それはまさに、二日連続でメシをたかられたiAcnの逆襲と言うに相応しい内容であった。彼、iAcnは、所有のHDレコーダーに毎週「シスタープリンセス・リピュア」を録画していたのだが、それを見るよう、荒野草途伸に強要してきたのである。しかも、史上二番目に痛いと言われる咲夜の回を、である。ちなみに史上最悪が可憐であることは言うまでもない。尚、この咲夜の回の内容については、大吉マスター21氏のページにて極めて正確なレビューが行われているので、そちらを参照していただきたい。
 尚、この日彼が見せられたのは咲夜、衛、鈴凛の3人分だけであった。というかそれで勘弁してもらったのである。荒野草途伸曰く、「鈴凛だけはまともだった」そうであるが、しかし、それだけで彼がシスプリ好きに転向するはずもなく、むしろシスプリ嫌いはいっそう加速したものと思われる。
 尚、iAcnの名誉の為、彼の主張だけは今ここで紹介しておこう。「俺も、可憐は嫌いだよ」フォロー終わり。

 この後、小腹が好いたからと二人で外に出たところ、荒野草途伸のPHSにメールが入る。前日、品川駅でコインロッカーを探しながら迷走しているときに送ったものへの返信であった。


> ごめんなさい!今メール気がつきました


 今頃気づかれても、と彼は思ったが、よくよく見ると、送信時刻は19時。その時点での時刻は23時。彼だって、4時間も気づかずにいたのである。他人のことは言えない。
 
 

12/30


 この日の朝の荒野草途伸の記憶は、殆ど無い。否、この日に限らず、彼にとって朝の記憶というのは、初めから存在していないに等しい。この様な状態の彼に、電話をかけたりしたらどうなるか。かつて、彼が大学生であった頃、卒業研究の指導教官がこれをやってしまったことがある。以降その教官は、二度と彼に電話がかけられなくなった。
 であるからして。彼がiAcn宅を出るとき、ユニクロの袋を忘れてしまったのは仕方のないことなのである。言わば、必然である。SUICA(JR東日本のICプリペイドカード)の残高が足りないのに、入金し忘れて改札を強行突破しようとしても、それは仕方のないことなのである。
 
 ユニクロの袋を下げて上大岡に戻ってきたとき、彼は、上大岡にもユニクロがあることを知る。しかも、立川や東京駅のユニクロよりも大きそうだ。
 人生こんなものである、とまあ、この程度だから言えるのであろう。

 この後彼は、再び昏倒しそうになるのを我慢して、12:30頃に出発した。直後、iAcnからのメールが入る。


> 撤収します


 早っ! と、さすがに彼は思った。だが考えてみれば、彼は荒野草途伸と同じ時間に家を出て、上大岡に寄ったりせずそのまま有明に直行しているのだから、このぐらいに撤収してもおかしくはないのである。
 ともあれ、この日は荒野草途伸は終日iAcnと別行動を取る、と最初から決まっていたので、大きな問題はなかった。予定通り有明に向かい、予定通り知人と会い、予定外の疲労感に襲われ、予定にあった後かたづけの手伝いを中止し、予定より早く15:30頃会場を後にする。小さな問題はあり。
 荒野草途伸曰く、「ラスト30分でもう少し創作少女系を回っておけば良かった」。帰り着いて速攻で寝込んでしまったくせに、何を言うかなこの人は。
 とはいえ、創作少女系の作品の質が極めて高いことは、これは事実である。萠えかネタかエロしかない他のジャンルに比べて、創作少女系は内容・画力ともに総じて高い。そして、質的に若干落ちるかなというところは、ちゃんと分をわきまえて値段もそれなりに抑えてある。さすがは、本家本元同人界の核と言ったところか。もし、万一ST氏(25歳)のような一般人を混み家に連れてくるようなことがあったら、創作少女系だけを見せて他は見せない、というのが最も良いと思われる。

 この日彼は、前述のように17:30頃に帰った後、すぐに寝てしまう。
 
 

12/31


 日付変わって午前0:30頃、荒野草途伸は起き出してくる。そして、iAcnに一本のメールを打つ。


明日、カラオケ行かない?

 疲れてばたんきゅーしてたくせに、何を言い出すかなこの人は。


何か、こう、むなしさを吹き飛ばしたい気分。


 との弁であるが、そもそも混み家等というピーターパン症候群の病原みたいなところに行くこと自体が虚しさの原因であるということに、気づいているのであろうか。
 ともあれ、彼は31日午後から、iAcnと秋葉原までカラオケ歌いに行くことになった。時間が決まった後、彼はこんな発言をしている。


 午前中は、例の東京ミュウミュウ(笑)でも見てくるかな


 ちなみにこの「東京ミュウミュウ」というのは、東京ミレナリオのことである。賢明な読者なら気づいていると思うが、この発言には重大な過ちがある。東京ミレナリオのことを東京ミュウミュウと発言している、確かにそれも過ちであるのだが、それ以上に認識レベルでの重大な過ちが潜んでいる。iAcnに指摘していただこう。

>東京ミレナリオってイルミネーションショーだよ
>コミケ帰りの暗い時間帯ならともかく
>明るい時間帯に行ってどうするの?


 正に、仰るとおりです、である。こんなんでよく、沖縄県職員採用試験で面接までこぎ着けたものだ。

 何であるにせよ、彼は出発時間ぎりぎりの午後14時頃まで寝ていたのだから、東京ミレナリオも東京ミュウミュウも見れなかったわけだ。

 カラオケで彼らが何を歌ったかは、敢えて触れないでおこう。世の中には知らない方が良いこともあるのだ。最も、殆どの人にはその内容にほぼ察しがついているとは思うのだが。ちなみに、荒野草途伸曰く
「満足に歌えたのは、ジェットマンだけだった。」
 それが満足に歌える段階で、問題です。

 ともあれ、こうして荒野草途伸の2002年最後の日は終わったのだった。
 
 

 二人がカラオケ店を出たとき、外はもう暗くなっていた。彼らは閉店間際の、今年最後の秋葉原界隈をうろついた後、それぞれの家路についた。二人とも、何故だか疲れ切っていた。乗り込んだ京浜東北線の電車が東京駅に到着したとき、荒野草途伸の脳裏に、一つの単語がよみがえった。
「東京ミュウミュウ・・・・」
 だが、彼にそれを見に行く気力は、もはや無かった。否、たとえあったとしても、それを見ることは出来ない、東京駅前で開催されているのは、そんな訳のわからんイベントではないからだ。
 そして宿にたどり着いたとき、彼は、来年の抱負を一つ思いついた。
「来年からは、東京ミュウミュウをちゃんと見よう。」
 荒野草途伸27歳。正月を迎える毎に、彼の人生は退行していくようである。
 

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