祐一「おい、念のために訊くが、この歌は何番まであるんだ?」
新濃部長「158番。」
祐一「・・・飛ばせ!」
新濃部長「最後まで聞かないのか?」
祐一「聞けるか。」
新濃「全く、最近の若い者は、せっかちで困る。」
祐一「せっかちでなくても、158番も聞かねーよ・・・。」
部長がタイトルを先に進める。
新濃「さあ、ここからが部員の自己紹介だ。」
CD「風間トオルです。よろしく。」
祐一「ずいぶん短い自己紹介だな。」
新濃「部員はたくさんいるからな。一人あたりの時間は短くなる。」
祐一「それより、部歌が長すぎるんじゃないか?」
CD「水野亜美です。医学部二年・・・。」
祐一「あれ?ここって医学部あったっけ・・・。」
CD「野比の○太です。一浪四留中・・・。」
祐一「・・・・・・。」
CD「如月ハニ○です。」
祐一「おい!」
新濃「なんだ。」
祐一「それはこっちの台詞だ。なんだこれは、これが部員だって言うのか?」
新濃「そうだ。何か文句があるのか?」
祐一「おおありだ。名前が全部アニメの登場人物じゃないか。」
新濃「偶然というのは意外と身近にあったりするものなのだ。」
祐一「四つも五つも重なったりするかっ!奇跡だそんなの。」
香里「奇跡なんて、滅多に起きるもんじゃないわ。」
祐一「そうだ、その通りだ。まがいものだ。お前が作ったんじゃないのか?」
新濃「そ、そんなことはない」
祐一「とにかく、これであんたの言う証拠とやらは無くなったわけだ。」
祐一「やっぱ怪しいぜ、あの部も、部長も。」
香里「そうね、むちゃくちゃ怪しいわね。」
祐一「今からでも遅くない。やめちまおうぜ。」
香里「相沢君。怪しいところにこそ、真実が潜んでいたりするものよ。」
祐一「はあ?」
香里「私がどうしてあの部に入ろうと思ったか、わかる?」
祐一「部長に惚れたから。」
香里「今の発言は聞かなかったことにしてあげるわ。」
祐一「・・・感謝します。」
香里「部長があたしを勧誘したとき、こう言ったのよ。
『地球は人類共通の郷土、宇宙は物質共通の郷土。我々の目的は、森羅万象全ての事物の真実を解き明かすこと』って。」
祐一「くさい口説き文句だな・・・。」
香里「あたしはね、真実を知りたいの。真実と向き合いたいの。たとえそれがどんなことであろうとも。あの日以来、あたしはそう決めたから・・・。」
祐一「・・・そうか。」
香里「こんな部で、真実も何もないって思ってる?」
祐一「ああ。部長があんなだし。」
香里「ふふ。でも、形からはいることも悪くないと思うのよ。口先だけの、言葉からでも。」
祐一「そうだな。」
香里「相沢君。できれば、あたしは、あなたにもつきあって欲しいの。あたしの、真実探しに。」
祐一「いいぜ。乗りかかった船だ。」
香里「ありがとう。相沢君にはいつも世話になるわね。」
祐一「香里にそんなことを言ってもらえるとは、ありがたいな。」
香里「そう?」
香里は笑った。
半ば騙されて入ったサークルだったが、今後香里と一緒にサークル活動に熱中するのも悪くないかなという気がしてきた。