舞「・・・ここ。」
祐一「ここか。表札見てやれ・・・水瀬。って、ここ俺の家じゃないかぁ!」
舞「・・・・そうなの。」
祐一「ま、まて。なんだその奇異なものを見るような目は。」
舞「・・・祐一、こういうもの読むのが趣味なの?」
祐一「ち、違う。断じて違う。俺が好きなのはどっちかというとというと中京スポーツの裏面記事とか・・・。」
舞「・・・・・。」
祐一「いや、そうじゃなくて。前言撤回。というか、この新聞の山を取ってるのは俺じゃない。秋子さんだ。だからっ」
秋子「あらあら、騒がしいと思ったら、祐一さんが朝刊取りに行ってくれてたの?」
舞「・・・おはようございます。」
秋子「毎朝ご苦労様。」
舞「・・・はい。」
舞はそのまま去っていった。
祐一「・・・秋子さん。」
秋子「はい?」
祐一「この新聞・・・どうするんですか?」
秋子「読むんですよ。新聞は読むためのものですから。」
祐一「・・・秋子さんが?」
秋子「ええ。」
祐一「なんのために。」
秋子「それは、企業秘密です。」
祐一「・・・・・・・。」
俺は何となく怖くなって、それ以上追求しないことにした。

舞「・・祐一、これ。」
祐一「あ、なんだこれ?」
舞「・・・購読申込書。」
祐一「・・・なんの。」
舞「・・・中京スポーツ。」
祐一「中京スポーツ。て、お前、これはどういう意味?」
舞「・・・祐一、取るんじゃないの?」
佐祐理「ふぇーっ。祐一さん、中京スポーツ取るんですかぁ?」
祐一「いや、それは・・・。舞、どういうつもりだ。」
舞「・・・ありがとう。」
祐一「ありがとうって・・・・。」
舞「・・・契約取ると、報奨金出るから。」
佐祐理「あ、そうなんですね。それで祐一さん、舞のためにわざわざ。」
香里「でも、そこで『中京スポーツ』ってのが相沢君らしいわね。」
佐祐理「ふえ?中京スポーツって、なんか曰く付きなんですかぁ?」
香里「ちょっと、ね。少なくともあたしは読まないわ。」
佐祐理「そうなんですかーっ。でも、祐一さんはやっぱり舞のためにとるんですよねーっ?」
祐一「いや、待ってくれ。俺は取るなんて一言も・・・」
ぺったん。
祐一「あーっ、舞っ、人の印鑑勝手に・・・」
香里「印章は無闇に持ち歩いたりしないものよ。」
舞「・・・明後日から入るから。」
佐祐理「良かったね、舞。」
祐一「う〜っ、名雪になんて説明すればいいんだ・・・」
香里「大丈夫よ。名雪ならきっと気にしないわ。」
舞「・・・祐一、感謝。」
一応感謝しているらしい。いや、きっと心の中ではとても感謝しているのだろう。
それにしても、この強引さ。つくづくたくましい奴だ。
伊達に18年間戦い続けてきたわけじゃないな、そう思いながら俺は、頭を抱えるのだった。

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