佐祐理「あははーっ、ちょっと遅れちゃいましたーっ」

車に乗った佐祐理さんがやってきた

北川「おい、相沢の知り合いって、あの美人のことか?」
香里「相沢君、やるわね」
祐一「別にそういう関係じゃ…」
佐祐理「倉田佐祐理といいます。よろしくお願いしまーす」

四人が、ひとしきりの挨拶を交わす
祐一「そういえば、舞は?一緒に来ると聞いていたが」
舞「…ここにいる」
祐一「なんだ、いたのか。しかし何で、助手席じゃなくて後部座席に座ってるんだ?」
佐祐理「私が、助手席が一番死亡率が高いって言ったら、…じゃあ後ろに座る、って」
祐一「おまえなあ…あ、こっちは川澄舞。えっと…」
佐祐理「佐祐理の親友です」
舞「…よろしく」
祐一「相変わらず愛想のない奴だ」
北川「しかし、この車に六人+荷物を載せるのか?無理そうだけど…」
祐一「そうだな…北川、おまえ、悪いがここで帰ってくれ」
北川「何、まさかおまえ、このあと美女五人に囲まれてあんな事やこんな事するつもりじゃ」
祐一「どんなことだそれは」
北川「…いいんだ。祐一は俺と違って、もてるもんなみんなも認めちゃうんだもんな。だけどどうせ、俺なんか、俺なんか、…・」
祐一「いじけるな。ほら、香里もつけるから」
香里「ずいぶんな仕打ちね」
名雪「ごめんね香里。引っ越しの時は、私も手伝うから」
香里「わかったわ」



香里と北川を残し、四人で車に乗り込む佐祐理さんの運転で、俺が助手席舞と名雪が後ろに座った
名雪「倉田さんと川澄さん、大学生ですか?」
佐祐理「あははーっ。今度一年生になりましたーっ」
舞と佐祐理さんは、浪人して俺と同じ学部に入った
夜遊び(と言っては変だが)していた舞はともかく、佐祐理さんまで浪人したのは正直意外だった
佐祐理さんは「私は頭の悪い女の子ですから、あははーっ」と言って笑ったが、俺は、わざと浪人したのではないかという疑念を抱いていた

祐一「そこ、うん、ここで止めて」
佐祐理「ここでいいですかーっ?」
祐一「ありがとう、ここで待ってて。荷物運びは、俺達でやるから」
佐祐理「そんな、暇ですよーっ。佐祐理達も手伝います」
祐一「でも、運転って疲れるでしょう。休んでてください」
佐祐理「舞は、そんなこと無いみたいですけど?」
後ろを見ると、舞と名雪が二人で、眠りこけていた
祐一「・・おいこら、名雪、舞、起きろ。起きないかこら」
名雪「…うにゅう」
舞「…何か用?」
祐一「ついたんだよ。全く、一時間くらいしかなかったのにすぐ眠りやがって」

車の後ろに回ると、そこには既に荷物を持った佐祐理さんがいた
祐一「…佐祐理さんはいいのに…」
佐祐理「一人だけ休んでるわけに行きませんよーっ」
祐一「じゃあ名雪、おまえは役に立たなさそうだから、先に行って鍵開けてこい」
名雪「祐一、もしかしてひどいこと言ってる?」
祐一「全然そんなこと無いぞ」
佐祐理「あははーっ」
大して多くない荷物を運び終え、一息つく
祐一「ふう…」
佐祐理「いい部屋ですねーっ佐祐理も、部屋借りれば良かったかなー?」
祐一「そしたら、舞の通学手段が無くなりますよ?」
佐祐理「舞も一緒ですよーっ」
舞「…。」
祐一「そうだ、いっそ四人ともここで住むというのはどうだ?」
舞「…四人で住むには狭い」
祐一「冗談だよ」
名雪「え、そうなの?」
本気にしたのか名雪…

帰り道、後ろに座っている舞が呟いた
舞「祐一、時々、来ていい?」
祐一「あ?ああ、部屋にか。もちろんさなあ、名雪」
後ろを振り返ると、名雪は寝ていた
祐一「…よく寝る奴だな」
佐祐理「寝る子は育つって言いますよーっ」
祐一「これ以上育っても、あんまり意味無いぞ…」
佐祐理「そんなこと無いですよーっ。舞なんか、名雪さんよりずっと大きいですよーっ?」
祐一「舞は、な」
そういって後ろに振り向くと、舞がじっとこっちを見ていた。
その目線がなんだか恥ずかしくて、つい目をそらしてしまった
舞「…祐一、目、そらした」
佐祐理「あははーっなんかやましいことがありますねーっ」
祐一「いや、そういうわけじゃ…」
三人で楽しく話しながら、俺は心の中で、これから始まる新生活への期待に胸を弾ませていた

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