その日俺は、郷土研究部の部室にいた。
意に反して郷土研究部に入ってしまった俺だが、はっきり言ってまじめに部活をやる気など更々ない。
だから香里に、「俺は幽霊部員になるからな」と言ってやったのだ。だが香里は、「そんな事すると羽がはえるわよ」と脅迫し、結局俺をここまで連行してしまったのだ。
新濃「さて、今日はめでたい、本年度第一回目の部会だ。まずは新入部員諸君、歓迎する。」
祐一「ちょっと待て。部会って、俺と香里と、あんたの、3人しかいないじゃないか。他の部員はどうした。」
新濃「・・・他の人たちは全員有休を取っていてね。」
祐一「何で大学のサークルに有給休暇があるんだ。だいいち、ここは給料が出るのか?」
新濃「まあ、そこら辺のことを知りたかったら、精進して部の幹部になることだな。」
祐一「・・・いないんじゃないか?ほんとは。」
新濃「そ、そんなことはない。だいたい、大学のサークルというのは、五人以上が集まらないと作れないものなんだぞ。」
祐一「それこそ俺みたいに脅迫まがいでかき集めて、その後幽霊化したんじゃないのか?」新濃「失敬な。私がいつ君を脅迫したというのだ。」
祐一「しただろ、あんたと香里の二人掛かりで。」
香里「言っていいことと悪いことがあるわよ。」
新濃「まあ、いい。この件に関しては、彼もいずれはわかってくれるだろう。それよりも、部員がいるいないという話だが・・。」
祐一「いないんだろ。」
新濃「それについては、このCDを聴いてもらおう。君たちに渡そうと思っていた、『オリジナル郷土研究部サウンドトラック』だ。」
祐一「ほんとにそんなもの作ってたのか・・・。」
新濃「この中には、部員全員の自己紹介が納められている。もちろん新盤を出すときには、、君たちのも入れるつもりだ。」
祐一「恥ずかしいぞ・・・。」
新濃「恥ずかしいかどうかは、聴いてから決めてくれたまえ。」
そういって部長は、CDを再生した。