食事を済ませると、もう八時だった。
祐一「名雪、お休み。」
名雪「う〜、まだ寝ないよ〜。」
祐一「無理するな。」
名雪「せっかく川澄さんが来てくれたんだから、まだ起きてるよ。」
舞「・・・わたしはかまわない。」
名雪「かまうよ。いろいろ話聞きたいもん。」
祐一「しょうがないなァ。今更俺から、何を聞き出そうってんだい?」
名雪「祐一じゃないよ。川澄さんだよ。」
舞「・・・何を話せばいいの?」
祐一「そうだな、まずは、毎晩佐祐理さんとどんなことをして楽しんでいるのか・・・」
舞「・・・一緒に帰ってる。」
祐一「いや、そういうことを訊きたいんじゃなくて・・・。」
こうして、三人でたわいのない話をして過ごした。
名雪「わ、もう九時過ぎてるよ。」
祐一「どうりで眠いと思った、か?。」
名雪「すごい、どうしてわかるの?」
祐一「天性の感、って奴だ。」
舞「・・・祐一に、そんなのがあるの?」
祐一「いや。実際は、名雪はいつも九時に寝るからというだけだ。」
舞「・・・そう。」
名雪「川澄さんは、いつも何時に寝るんですか?」
舞「・・・九時。」
名雪「わ、じゃあ、わたしと同じだね。」
祐一「待て、名雪と舞を一緒にするな。舞は三時に起きるから寝るのが早いだけだぞ。」
名雪「そうかな?やっぱり、九時に寝るのは基本だと思うよ。」
舞「・・・・・・・・・。」
俺は苦笑せざるをえなかった。高校時代の舞は、それこそもっともっと遅くまで起きていたのだろうから。
名雪「川澄さん、じゃあ、一緒に寝ようか。」
祐一「名雪と舞が・・・一緒に・・・寝る・・・・。」
名雪「祐一、覗いちゃダメだよ。」
祐一「・・・いいや、覗いてやる。絶ッ対覗いてやるゥ!」
名雪「女の子の寝姿覗くなんて、変態、だよ。」
祐一「いや冗談だ。」
名雪「じゃあ、川澄さん。どうします?」
舞「・・・私は、もう少し祐一と話していたい。」
祐一「そうだな。配達休みなんだから、九時に寝る理由はないよな。」
名雪「・・・そう。じゃあ、先に寝るから。」
舞「・・・おやすみなさい。」
祐一「おやすみ。」
さて、舞と二人きりにはなった(隣で名雪が寝ているが)。
が、今更改まって舞と話すことなど、そう無い気がする。それは舞も同じらしい。お互い無言のまま、時が過ぎてゆく。
祐一「・・・なんか俺達、恥ずかしがってる恋人同士みたいと思わないか?」
舞「・・・思わない。」
祐一「あ、そう。」
・・・・・・・・・・。
祐一「なあ、しりとりしようか?」
舞「・・・非生産的。」
祐一「そうだな。」
妙なところで成長してやがる。
・・・・・・・・・・。
祐一「なあ、舞。佐祐理さんって、何で浪人したの?」
舞「・・・・・?」
祐一「いやさ、佐祐理さんって、なんか浪人するってイメージ無かったし・・・。」
舞「・・・聞いてないの。」
祐一「何を?」
舞「・・・そう。」
祐一「だから何を」
舞「・・・私も聞いてない。」
祐一「・・・なんじゃそりゃ。」
舞「・・・私も、佐祐理が浪人したのは意外だった。だから佐祐理に訊いた、『何で浪人したの』って。」
祐一「で?」
舞「・・・『佐祐理は頭の悪い子ですから。あははーっ。』て。」
祐一「俺の時と同じだ。て言うか、いつもそれではぐらかされてる気がする・・・。」
舞「・・・佐祐理だったら、私立でも行けたのに・・・。」
祐一「そりゃあ、・・・。」
舞と一緒の大学に行きたかったからだからさ、と言おうとして、思いとどまった。こんな事を言ったら、また舞は変に気にするかも知れない。
舞「・・・何?」
祐一「・・・いや、私立はお金かかるじゃないか。」
舞「・・・そう。」
納得はしていないようだったが、舞はそれ以上追求してこなかった。
祐一「・・なあ、舞。」
舞「・・・何?」
祐一「俺達、一緒の大学に来れて良かったな。」
舞は返事をする代わりに、こくりと頷いて見せた。
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